【#読書】「『青鞜』の冒険」森まゆみ  ……私たちはなにを期待しているのか

本書で語られている”青鞜”は、明治44年に創刊された雑誌だ。勝手に”日本で初めての、女性が中心になって作られた雑誌”だと思っていたが、ちょっと検索したぐらいではそのような文言は出てこない。
雑誌と、中心メンバーだった平塚らいてうの名前を知っているぐらいだった。永井愛さん、二兎社の公演「私たちは何も知らない」を今年の初めに見た。平塚らいてうが主人公の、雑誌”青鞜”についての芝居だった。
本書の副題は「女が集まって雑誌をつくるということ」。著者もまた、地域雑誌「千駄木」の創刊者だ。本書が描いているのは、平塚らいてうや伊藤野枝や、彼女たちと共に雑誌「青鞜」を作った女性たちのストーリーではなく、「女が集まって雑誌をつくるということ」の観察記録ではないか。
とはいえ、雑誌”青鞜”も、本書も、平塚らいてうが中心だ。二兎社の公演を見ても、本書を読んでも思った。平塚らいてうというひとは、もしかしたら他者から見て「分かりづらい」ひとだったのではないか。身近な人ひとに「好きなんだけど嫌い」と言われるような、そんなひとだったのではないか。
こちらは未読なのだが、「青鞜の時代」(堀場清子、岩波新書)という本があった。紹介文の一節に”家制度への反逆,良妻賢母主義との対決を通して,自我を追求し,愛と性の自由を徹底的に求め実践した「新しい女」たちの群像”とある。
これを読んで気がついた。もう、まったくもって、こちらの勝手な思い込みなのだけど、どうも、芝居にも、本書にも「反逆」やら「対決」を期待していたのかもしれない。しかし、どちらもそのような要素は薄かった。

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