面白かった。
確か、高千穂遙「ダーティ・ペアの大冒険」の解説で、野田昌宏か栗本薫が書いていたと思うのだけど、高千穂遙は小説を少し読み進めてそこまでで人が死んでないと「誰も死なない、つまらない」と怒り出すのだという。
それでいけば、この小説には大満足だろう。なにせ人が死ぬ。バタバタ死ぬ。かんなり残酷に死ぬ。
”周囲の人間がバタバタと死んでいく”トランジと、その友達のピエタの、少女から老いるまでの物語だ。百合もののフォーマットを使っているのかもしれない。そして、出てくる死は、乾いている。だから、読みやすい。死んでるけど読みやすい。
荒唐無稽な物語だ。荒唐無稽だけど、現実にも、死は身近にある。
最初のいくつかの章で、ピエタとトランジは学生だ。そこから段々と二人は年を重ねていく。
彼女たちが年を重ねることで、最初は思春期の鬱屈に思えたものが、そうではなく、普遍的な残酷さだと気付かせられる。どちらかしか選ぶことが出来ないなら、鬱々とした残酷さよりさわやかな無残さの方がいい。
面白かったが、読む人は選ぶ。死ぬことは死ぬことでしかない。