【#読書】「怪物ベンサム 快楽主義者の予言した社会」 土屋恵一郎(講談社学術文庫)  ミイラは空を飛ばない

タイトルに惹かれた。副題「快楽主義者~」。
裏表紙には「人間を会館と欲望の中に配置し~」。しかも彼は”思想家”だと言う。
会館と欲望を思想立てているというなら、それは気になる。誰だって気になる。

「最大多数の最大幸福」という思想で知られる。18世紀……?のイギリスの哲学者。
読んでみると、評伝と思想の解説の間を漂う文章と感じた。ベンサムの生涯を順にたどった、必ずしもベンサムに感情移入していない文章の集まり、というような。
彼の人となりは多少分かった。思想を理解したければ本書だけでは足りない。理解しきれなかった俺の言い訳か。すいませんそうかもしれない。
終盤の文章。何にもなれそうもない人のさみしさがあり、その部分を読んで胸が高鳴った。ベンサムは忘れられてはいない。表紙に記されているのは彼のいわば標本だそうで、それはロンドンの大学に飾られているんだそうな(頭部だけは蝋で出来たレプリカ)。
彼の思想よりもしかしたら彼の標本によって彼の記憶は現在に繋ぎ止められているのかもしれない。ミイラは忘れるなよと傲然とつぶやきながら、保管されている大学の廊下を、足を引きずりながら歩き回っているのだろう。

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