【読んだ本】「フィフティ・ピープル」チョン・セラン。わたしはこのなかにいる。

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり)

すごくいい小説だ。登場人物のみんなを好きになってしまいそうだ。表紙や目次に、いろんな顔のイラストがある。この人たちのところに行って、肩を叩きたいしできればちょっと肩を叩いてほしい。そんな気になってしまう小説だ。
韓国の、とある大学病院を舞台にした連作短編集。一つ一つの作品は短い。長めのものもあるが、多くの作品が10ページ程度で終わる。
大きな病院の、その中での人間の悲喜劇が、生と死が、軽妙に描かれる。訳者あとがきの中で、作者の言葉がある。
「複雑な思考や苦悩を、読者とともにしてくれる作家はたくさんおられるので、私は軽やかな、気安い作家になりたい」
多くの作品は軽妙に書かれている。しかしときどき、作品の中に、生々しい傷が出てくる。それまでの軽妙さと比べ、またそこからの軽妙さも損ねるものではないが、しかしその傷は、本書を読み始めたときの自分の勝手な、「この本はこういう作品か」という感触からすると、驚くほど深い。
同じような傷は、私たちの国にもあるはずだ。しかしこの傷の取り上げ方は、私が今までに読んできた物語と違う。これが彼女の持ち味なのか、それとも。
もしかしたら、私が今まで読んできた物語の、傷の取り上げ方は、古びてきているのだろうか。そんなことも考えてしまった。だからこの人の別の作品を読みたい。
とにかく「フィフティ・ピープル」は面白い。そして目新しい。

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