IRA=アイルランド共和国軍の内務保安部長、ヴィクター・マクガワン。彼はその冷酷さから、組織の殺人マシーンとして出世してきた。……これはヴィクター・マクガワンの暴力性と悲哀に満ちた三年の歳月と、暴力が彼自身をも壊していく過程を、三部に渡って辿る”悲劇”である。
(パンフレットより)
いや、良かった。
ここ二、三年に見た演劇作品の中でも良かった。ただ、じゃあ何を見た?と聞かれるととっさに答えられないところがツラい。でも三年としたら「レミゼ」も入るんじゃないか?「ラ・カージュ」は入るな。「THE BEE」はかなり前か。あれと比べると分が悪いかもしれない。でも良かった。
女優、趣里が良かった。
マクガワンに捕まる”女”を演じていた。その趣里が良かった。
両手を縛られたままアルミの水筒で水を飲む趣里がセクスィーで良かった。両手を縛られたままタバコを口にくわえる趣里がセクスィーで良かった。その場の最後で両手を縛られたまま歌う彼女も良かった。
ドラマ、「ブラック・ペアン」からあと、映像でもよく彼女を見る。納得だ。
本作の背景には、北アイルランド紛争がある。アイルランドの独立についての、イギリスとアイルランドの間の凄惨な紛争だ。
自分は多少の知識はあった。ただ劇中には、紛争についての直接的な説明はない。見ていて、その部分が観客に伝わるのかと心配になった。しかし、同じく劇場で見ていた若い女性が連れに「生で見たかった」と話していた。映画館で、録画された演劇を見る形式。だが終演後の劇場には満足した空気が漂っていたように思う。ドラマは伝わったのだ。面白かった。