読書会のためにフレドリック・ブラウンを読み始めたが、いや面白い面白い。SFじゃない本作なんて、それまでは読む気もなかったのに読み始めたら止まらない。
”18歳の少年、エド・ハンターがアパートで目を覚ましたところから話は始まる。父親と一緒に勤め先の工場に行くのが彼の日常だったが、家の中にいるはずの父親がいない。外を見に階段を出たエドは、警官に出会う。やりすごした警官はエドのアパートに向かっていく。エドは母と警官の会話を聞いてしまう。「奥さん、彼は死にました」”
18歳の少年が、ショーマンの伯父の力を借りて「自分が知っているつもりだったけど知らなかった」父親の、死の謎を解こうとする。
この事件の中で少年は大人になっていくのだけど、そのプロセスが瑞々しい。
いままでの日常がなくなったことへの戸惑い。義理の母親、義理の妹との葛藤。はじめての「女」との出会い……。書かれたのが1947年、昭和22年、しかし読んでみて驚くほど違和感がない。いまよりも、おそらくは清潔でないシカゴの生暖かい空気が、行間から溢れてくる。
数少ない、この本の書評を読むと「愛すべき小品」という言葉があった。「小品」でいいんだと思う。ひとりひとりの人生はそんなに大きくないんだから。エドという少年、青年の「身近」を拾い上げた作品だ。

【#読書】#戯曲 平田オリザ「火宅か修羅か・暗愚小伝」 #演劇