うん。柄本明から目が離せなかった。なぜだろう?
NHKの「地域発」ドラマ。宮崎が舞台。
番組ホームページ
宮崎発地域ドラマ 「宮崎のふたり」 NHK宮崎放送局(5月5日(土)地上波放送、もともとはBSで2016年放送)
番組のホームページより、あらすじ。
「単身宮崎に、定年退職した男・幸彦(柄本明)はやって来た。
何かに付けて下品な言葉を使う、かなり嫌な中年男である。
幸彦にとっては、40年前の新婚旅行で訪れて以来の宮崎訪問だった。
妻の京子(原田美枝子)から送付されてきた怪しいハガキを持ち旅をしていた幸彦は、宮崎で生まれタクシー運転手をしている詠介(森山未來)と、詠介の彼女の咲耶(池脇千鶴)に遭遇する。
詠介と咲耶と3人で、むかし新婚旅行で妻と巡った宮崎の思い出の地をたどっていく。そうすることで、失ってしまった妻との時間を取り戻そうとするが…。」
この柄本明が……本当にイヤな男だった。もちろん、演じた幸彦が、そう見えた、ということだけども。だけどもイヤな男だった。近年テレビドラマでは見ないくらい。
ちょっと前までたくさんいた、日本の高度成長を支えたサラリーマン。その典型の、凝縮。仕事に熱中し、家族のことをかえりみず、妻のいうことも聞かず、変化にもついて行けず、ひたすら文句を言う……。
テレビで見やすいような「実は優しかった」とか「裏に人情味が見える」とか、そういうレベルではない。新婚旅行で訪れた建物の現在の荒れ果てた姿を見た彼は、タクシー運転手の森山未來に怒りをぶつける。
「だから地方はダメなんだ」「こんなはずじゃなかった」そのいら立ちの破壊力は「シン・ゴジラ」レベルで、傷つけること、破壊することの魅力に思わず見入ってしまった。そこまでやった柄本明がエラいのか、そこまでやらせた脚本・演出がエラいのか。
もちろん、ドラマ全体としては破壊するだけじゃない。対する森山未來・池脇千鶴は優しい。ときにはいら立ちを見せるが、ゴジラ柄本明をよく受け止めている。ことに、このドラマでの池脇千鶴に惹かれる。脚本は、「リッチマン、プアウーマン」の安達奈緒子。見やすさのツボはきちんと押さえてある。
そうだ。「日本のサラリーマン」。近年は「イヤなおじさん」とイコールになっている。
しかし「日本のサラリーマン」だって、「イヤなおじさん」になりたくて仕事に励んでいたわけじゃないだろう。仮に、彼らは、経済成長の中で「イヤなおじさん」にならざるを得なかったのだとしたら?日本の高度成長とは反面、「イヤなおじさん」を大量生産してしまう、そういうシステムだったのかもしれない。
このドラマの中で「イヤなおじさん」は代償として、「妻との温かい余生」を失っている。
しかし、またドラマの中で彼は、宮崎との関わりで、何かは取り戻せたのではと思う。
作品のホームページで脚本家は、「なのにこのドラマは宮崎の悪口ばかり言っています」と謝っていた、しかし見終わって、「宮崎」が強く印象に残った。行ってみたくなった。