「ムーミン」の作者、トーベ・ヤンソンについての記事を読んだ。生きづらかった人だったのだとはじめて知った。
タイトルに「トーベ・ヤンソンという生き方」とあった。読む前は、「生き方」という言葉は大げさなように感じた。読み終わって思った。彼女は彼女の幸せを得るために、それまでに得たものを色々と捨てた。得ることが出来たかもしれないものも捨てた。その捨て方の集積は「生き方」という言葉にふさわしいものだ、と思う。
ムーミンの原作。子供の頃に、施設の図書室だったか、養護学校の図書室だったかで呼んだ。大判の、原作のイラストを使った、丁寧な作りの本だ。
シリーズ7冊で「ムーミン谷の冬」。これが強く印象に残っている。ムーミン一家のひとたちは、通常、冬眠をする。しかしムーミントロールは、なぜだか冬のさなかに目を覚ましてしまう。ふだん接しているムーミン谷のひとたちの多くと、ムーミントロールは春まで会うことが出来ない。ムーミン谷は雪で埋もれている。白い雪で埋もれている。
なにか。幾ばくとした寂しさが一冊の本の中でずっと続いていた。そのように覚えている。