読書談義 「スクールボーイ閣下」ジョン・ル・カレ、「火星の人」&「ローバー、火星を駆ける」

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読書会「読書談義」、今月も水曜文庫さんでやらせていただく。
今回は某S様が「スクールボーイ閣下」ジョン・ル・カレ、岡が映画にもなった「火星の人」とノンフィクション「ローバー、火星を駆ける」。
水曜文庫さんにいらしたお客さんが、参加してくれたりでなかなか盛り上がる。にしてもル・カレ「スクールボーイ閣下」で盛り上がるのだから、某S様のプレゼン能力のおかげなのかもしれない。
しかし、ル・カレと「火星の人」だ。少なくとも、幅は、相当、広い。うん。

そのために作った「加勢の人」についてのレジュメを載せてみる。
長すぎるかもしれないし、書式が崩れるかもしれない。とりあえずやってみます。

*

「火星の人」アンディ・ウィアー(ハヤカワ文庫SF)(恨みがましくいうが現在は上・下巻分冊)

  • あらすじ
    • 人類による三度目の有人火星探査ミッションの最中、探査チームは猛烈な嵐に襲われた。船長ははやむなく、撤収を命じるが、船外作業をしていたクルーの一人マーク・ワトニーは突風で飛ばされてしまう。
    • これ以上宇宙船での脱出が遅れれば、全員の命が危ないという判断で、船長はワトニーは死亡したと判断し、宇宙船で地球への帰途につく。
    • 宇宙船から連絡を受けた地球ではNASAの長官が記者会見を開きワトニーの死亡を公表した。だが彼は奇跡的に来ていた……。
    • かろうじて砂漠からハブ(仮の居住、観測施設)に戻ったワトニーは絶望的な現実を思い知らされる。ハブには一か月分の食料しか残されておらず、次の探査ミッションが火星に到着するのは4年後のこと。それまで生き抜くためには食料だけでなく酸素や水も作り出さなければならないのだ……。
  • 背景など
    • 興味深いのは、この本はもともと自費出版、しかもkindleの自費出版で始められたということ。従来のベストセラーとは成り立ちが違い、最初は出版社から発行された本ではなかった。
    • もともとは作者は、自分のサイトでこの小説を無料で公開していた。その小説をまとめて読みたい、またkindleで読みたいと言う読者の要望に答え、最も安い有料価格の99セントで、Amazonの電子版で発売した。
    • すると、3カ月で3万5千部が売れる大ヒットとなった。このヒットが引き金となりcrown publishing groupから紙書籍版が発売され、映画化につながった。
      • (crown publishing groupがどのような出版社かは分からないが、ホームページを見たところオバマ大統領やミシェル夫人の本も出版されている模様。小さい出版社ではないと思われる。)
    • この本の魅力
      • 理性とユーモアで物事を解決しようとしているところ。
      • あらすじで「絶望的」と書いたけれど、それは映画会社の作った説明の写しで、この主人公は実際には、それほどはは絶望してない。
      • 第1章の最後で「つまり、こういうことだ。ぼくは火星に取り残されてしまった。〈ヘルメス〉とも地球とも通信する手段はない。みんな、ぼくが死んだものと思っている。そして僕は31日間だけもつように設計されたハブのなかにいる。
        もし酸素供給器が壊れたら窒息死。水再生機が壊れたら渇きで死ぬ。ハブに穴が開いたら爆死するようなもの。そういう事態にならないとしても、いつかは食料が尽きて餓死する。
        ああ、まったく。最悪だ。
      • しかし、次の第2章の1行目にはこう書いてある「さてと、ひと晩ぐっすり眠ったら、状況は昨日ほど絶望的ではないような気がしてきた」
      • この小説の大きな魅力は、主人公が明るいところだ。どう考えても絶望的な状況だと思うのだが、問題を解決するために知恵を絞り、行動をする。
      • 食料が足りない→持って行った食料から何か育てられるものはないか→じゃがいもだったらなんとかなるかも→しかし、育てるための水が足りない→燃料として使われているヒドラジンから、水素を分離することが(危険だが)できるかもしれない→しかし、水を合成することができたとしても、水を保管しておく食べるところがない。
      • 問題はこんなふうに山のように発生するのだけれどとにかく主人公がへこたれない。
    • なぜ皆さんに紹介しようと思ったか。
      • 「理性的に物事を進め、問題を解決する」という考え方を提示するのは、SFの大きな魅力だったと思う。
      • それは細かな葛藤を切り捨てる、ということでもあり、SFが「単純だ」「深みに欠ける」と言われる要因だ。
      • しかし「人間」性を従来の小説とは別の方面から照らす魅力もあった。「こういう考え方もあるのか」というのはSFを読む大きな楽しみだったと思う。
      • 最近は、SFやミステリも陰惨なモノが多く、「単純」なSFは減った。「火星の人」を読んで「SFって本来こうしたものだ」と思った。「古典的なSFが現代に突然変異的にあらわれた」作品として紹介したいと思った。

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