読んだ本 「フランク・ゲーリー 建築の話をしよう」

フランク・ゲーリー建築の話をしよう小20160620_105518

フランク・ゲーリー……建築家。なんっか、ヘンな建物を作る人。美しいのだけどヘンな建物を建てる人。
ビルバオ・グッゲンハイム美術館などが有名。「アメが溶けたような」……違うか。「溶けかけた氷のような」「見たこともない」建造物を作る人。とにかく特別なので以下のまとめページを見てみて下さい。

しかし、この本の中のフランク・ゲーリーは、普通の人だった。驚くほど普通の人だった。

インタビュアーである著者が、フランク・ゲーリーの生涯と作ってきた作品を、聞き語りでまとめた本だ。本書の中で、フランク・ゲーリーは芸術家然とした言葉は一言も話さない。東洋思想や歴史の話もしないし、俺はむかし貧しくて大学も行けなくてけれど死ぬほどがんばって云々」などという話もしない。実際貧しくて働きながら大学へ行ったそうだがことさらに苦労を語ることはない。そしてとにかく、話に難しいところがない。縁側でお茶を飲んでいるおじいさんのような語り口で、しかし、美しい写真に出てくる建造物は奇妙きてれつだ。ギャップが凄くて読んでいてめまいがしそうになった。

作っている建物がぶっとんでいるので、彼に対する悪評もあるようだ。しかし彼の言葉を読んで、自分は彼が好きになった。成功も失敗も淡々と語り、不満や他人の悪口はほとんど言わない。自分のような建築の素人がこの本から学べたことはほとんどなかったが、この人の言葉をもっと読みたいと思い、他の本も探してしまった。残念ながら手の届くところにはなかったが。

別件。この人はユダヤ人だ。カナダ出身だが、第二次大戦のころ、アメリカで従軍している。少なくともその時代には、日常や軍隊生活の中で、ユダヤ人に対する差別は当然のようにあったらしい。そのこともやはり、当たり前のように淡々と語られる。

個人的な感想だけど。「あいつらは違う」「あいつらは嫌だ」こんな感情にも長い歴史がある。簡単に変わるものでもない。だから、いま、うまく行っていないように思えても、長い目で、一歩進んでいるようならそれでいいのではないか。簡単に絶望してはいかんと、淡々と思った。

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