感想「月は無慈悲な夜の女王」ハインライン

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R・A・ハインライン「月は無慈悲な夜の女王」
(この写真、怖い……(笑))

分厚いです。分厚いですが、一気に読んでしまいました。面白かった。
SFの古典。古典だけど、読んでなかった。SFを読んだという快感です。

月に作られた植民地が、地球連邦政府に独立を宣言する。あらすじだけなら、日本のアニメにある。マンガにもある。この本「月は~」の方が古いのに、読んできて既視感を感じる。それでも、この本の価値はある。わたしたちに、違う価値観を突きつけてくれる。端的に言えば、簡単に人が死ぬ。

乱暴に言えば「人が一人二人死のうが生きようが、地球の軌道が変わるわけではない」ということだ。とてもざっくり言ってます。ご容赦ください。

こないだ、クリスティーについての文章で書いた「ミステリは、正義について考えざるを得ない文学だ」。犯人を追及するということは、犯人を裁くということとほぼイコールだ。そのとき探偵も、読者も、自分の正義について考えざるを得ない。
しかしSFは、そうではない。
人間一人の命と、地球はどちらが重いか?SFでは「地球の方がずっと質量がでかい。だから、人の命より地球の方がずっと重い」と言ってしまってかまわない。善し悪しではない。相対化だ。わたしたちがわたしたちの日常で大切にしている正義や人道といった価値観を、わたしたちから切り離してくれる。わたしたちから切り離して相対化してくれる、その快感がSFの醍醐味だと、あらためて教えてもらった。

別に、残酷な本ではない。特に本書の多くを占める、知能を持ったコンピュータ、マイクと主人公の会話は、とても楽しい。それだけにラストは……。例えばSiriが、自分の意志で話し出したら。もし彼が彼女がわたしたちの友達になってくれたら。わたしたちはどう思うんでしょうね。また、去年のデモのような、わたしたちが「怒る」ための教科書にもなるでしょう。その意味ではいま読んで良かった。ハインラインは「宇宙の戦士」が新訳になっていた。こうなると読みたくなった。

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