映画の「桐島~」は見てない。見てないが、勝手に、暴力的な印象を持ってる。予告編で見た神木隆之介の叫び声のせいか、制服姿の山本美月が見せていたさげすむような目線のせいか。
そういうものかと、少し覚悟をして小説を読んだ。ずいぶん違った。「私はあなたより上だ」視線は昔から有る。さげすみの表現はこの小説の中にずっと出てくるが、それはただ単に、私たちの中に普遍的にあるものを隠さずに書いたというだけだ。引き込まれたのは美しさだ。教室や。校庭や。薄汚れた花屋や。彼らが動くたびに、輝きが生まれる。その輝きは、夏の終わりの、喫茶店のかき氷のように、はかなく消えてしまうのかもしれない。でも輝きだ。
彼らは、その輝きはすぐに消えてしまうと思っている。僕らは、もう少し続くと思っていた。そして僕らは輝きが消えてしまったことにイライラとしている。彼らはどうなるのだろう。

読んだ本「ニクソンとキッシンジャー 現実主義外交とは何か」大嶽秀夫