「鋼鉄都市」アシモフ

SFミステリの金字塔。いろんな金字塔があるかもしれないが、これは間違いのない金字塔。東京タワーぐらいの金字塔。

すべての地球人が、都市ごとに、外界と隔絶された鋼鉄のドームの中で暮らしている未来。ニューヨーク市警の刑事、ベイリは突然、総監に呼び出される。事実上、地球を支配している宇宙人が彼らの居住区で殺された。地球人がその犯人を見つけ出さなければ、重大な外交問題となる。しかもベイリは捜査のパートナーとして、地球人に嫌悪されている宇宙人側のアンドロイドと組まなければならない。

久しぶりに読んだ。驚いた。舞台となるニューヨークシティの描写が、暗かった。ディストピアだ。ユートピアの反対だ。ブレードランナーのサンフランシスコを思い出した。いま現在の印象では、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」のサンフランシスコより、「鋼鉄都市」のニューヨークの方が、映画「ブレードランナー」のサンフランシスコに近い。生々しい。
主人公の、ベイリ。イライジャ・ベイリも、生々しい。市民としての階級の降格におびえる。同級の友人の出世に複雑な思いを持つ。夕食の合成肉の味付けをこらえる。妻や息子との関係に悩む。生々しい。
この生々しさが、相棒となったアンドロイド、ダニエルとの関係の中で、最後にすがすがしさに変わる。二人の変化を描ききったことが、この作品をSFの中の金字塔にしているのかもしれない。なによりもまず、生々しさ。

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