ホップスコッチ (ハヤカワ文庫 NV 262) | |
ブライアン・ガーフィールド 佐和 誠
早川書房 1981-03 |
名作です。どう考えても名作です。本当に名作です。しかしいわゆる「名作紹介」なんかではあまり見かけません。しかし名作です。しつこいようですが名作です。
スパイ小説です。
東西冷戦華やかな頃、CIAを辞めたスパイ。彼が仕掛けたゲームにより、CIA、KGB、MI6が北アメリカやヨーロッパ中で彼を追いかけ回す(ホップスコッチ)ことになる。
ル・カレほど重たくなく、フリーマントルほど粘着質でなく、やはり作者がアメリカ人なせいかあの「霧の都ロンドン」な感じはしません。個人的には「エロイカより愛をこめて」の雰囲気があると思っているのですが、こんなこと言うと怒られるかもしれません。少なくとも○モは出てきません。
ここから少し真面目な話です。
演劇の稽古の中で、問われたことがあります。
「この登場人物は、戯曲の最初と最後でどのように変化するのか?」
役者にとっては、キャラクターをどう変化させることが出来るのか?という問いです。
その「変化」(あるいは「成長」)をお客さんは受け取る(=面白がる)のだということです。
小説の場合、変化が必要なのかどうか、自分には分かりません。
特にスパイ小説、ミステリ小説では必ずしも必要ではないかもしれません。しかしこの「ホップスコッチ」では、キャラクターは変化します。それは自分には「成長」のようにも思えます。それがこの小説の魅力だと思うのです。