行動主義―レム・コールハースドキュメント | |
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瀧口 範子
TOTO出版 2004-03 おすすめ平均 |
世界第一級の、オランダ人建築家に関するドキュメント。
けれども建築家があまりにも忙しく世界中を飛び回るので、取材する方も捕まえるのが大変だと、その大変さの記述が4分の1ぐらいを占め、しかしその部分がけっこう面白かったりもします。アメリカでは夜中に移動するためのリムジンの中でのインタビュー、その次は中国、その次のオランダではインタビューを途中でキャンセルされ・・・。天才というのはやはりはた迷惑なものであるようです。
常に、表現と現実のバランスをとらなければならないということ、作業には大勢の人間が関わるということ、そして最後の作業は自分ではない人間にゆだねられるため、イメージをどう伝えるか、どう説得していくかが問題となること・・・これらの点で建築と芝居の演出は重なるような気がして、いま自分は建築家の人たちに勝手なシンパシィを抱いています。
コールハース本人の言葉ではないのですが、この本の中にあるコールハースについてのインタビューの中で、アメリカの建築評論家がこんなことを言っていました。
「彼らのリサーチは科学的であるように見えますが、それ以上に魅惑的で見る人をうっとりさせるようなものである。その方がずっと重要なんです。」
この「うっとり」の部分を、でもけっこう忘れてしまいませんか?